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「デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム!」について

 

                                                ペロペロ二等兵

 

 

「デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム!」はTVアニメシリーズ「デジモンアドベンチャー」の劇場版である。2000年の春に公開され、「ワンピース」と同時上映だったこともあり、上映時間40分と作品としては短いものだったが、2000年当時の社会問題を取り入れた完成度の高い作品として原作のファンだけではない多くの人から高い支持を得ている作品でもある。この作品についてSF的視点から考察していこうと思う。

 

 

 

 

まずデジモンとは何なのかを説明しようと思う。デジタルワールドという現実世界に似たデータの仮想空間に存在するモンスターがデジモンで、多種多様に暮らしている。TVシリーズでは選ばれし子供たちがデジタルワールドに飛ばされて冒険をしていくという物語だが、劇場版の舞台は現実世界とインターネット空間になっていて、全体的なストーリーは、インターネット上にデータを食べて成長する新種のデジモンが見つかり主人公たちが力を合わせて戦うという設定になっている。

 

 

 

 

劇中では新種デジモンがネットの中の様々なデータを食い荒らし、デジタル時計が壊れてしまったり機械の故障でスーパーのお刺身の値段が百万円もしたりと現実世界に様々な混乱を与えているシーンがある。このシーンは一見現実とはかけ離れていることのように思えるが、我々の世界でも十分起こりうるものだと私は考えている。それは今日のネットの世界はすべてつながっておりセキュリティーさえ通過できれば、空を飛んでいる飛行機でさえパソコン一つでジャックできる時代だからである。監督は、2000年では人々がまだ気づいていないインターネットの問題や恐ろしさを示唆しようとしていたのかもしれない。

 データを食い続けた新種のデジモンは驚くべきスピードで進化し、NTTを乗っ取り電話の回線を無茶苦茶にするなど行動もますます過激になっていく。そしてついにはアメリカ軍のサーバーにまで到達し核ミサイルを発射してしまう。2000年に見たときと最近になってみたときのこのシーンへ抱いた思いは大きく違った。というのも、上記した通り2000年の家庭でのインターネットの普及率が低いこともあり、ネットへの関心もなかったので、デジモンはアニメの中だけの存在でこんな出来事は起こりえないだろうと思っていた。しかし、最近みたときの感想は、この出来事は近い将来起こりうるのではないかというものだった。たしかにデジモンなんてものは存在しないかもしれない。しかし、デジモンに近いものは出来つつあるのではないかと私は思っている。それは、AIである。今のところ感情を持ったAIは存在していないが、このまま科学が発達し続ければ、感情を持ったAIが誕生し、山之口洋先生の授業で扱ったようなAIによる逆襲があるのではないかと思わせられるシーンであった。

 

 

 

 

対象が子供になっている映画なので全体的に非現実的に見える作品で大人には向かないかもしれないが、インターネットの状況が大きく変わった2017年に見てみると、大人でも深く考えさせられるような作品であることが改めて理解することができた。

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