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私とヴァンパイアの共通点

参謀 

 

 私とヴァンパイアの共通点と聞かれても簡単には思い浮かばない。なぜなら、私はヴァンパイアではないし、ヴァンパイアと話したことも、ヴァンパイアを見たこともないからだ。そして、何よりもヴァンパイアというものは、現実の世界に存在しないのである。そうしたヴァンパイアから、私(一般的な人間)との共通点は、ひどく見出しにくいのである。

 そんな中で、私がヴァンパイアから見出したいのは、人間とバケモノの間とも言うべき部分だ。

 ヴァンパイアに血を吸われた人間が、ヴァンパイアになるのなら、ヴァンパイアを増殖させればよい。そのため、地方の館や城に住むのではなく、都市に棲みつこうとする。私なら多少はそう考える。しかし、ヴァンパイアはルーマニアの地方に住んでいる。仮に私がヴァンパイアなら、都市か地方かで迷った末、やはり地方に住むのではないか。ヴァンパイアは孤独で途轍もない不幸者である。他人の血を吸う恍惚など夜の限られたわずかな幸福に過ぎない。生き生きとした人間を見るだけでも嫌気がさすだろうし、都市には鏡が多すぎる。だからと言って自殺することはない。ヴァンパイアと私と最大の共通点に挙げられるのが、高邁な自尊心や英雄感だ。

 自分は他人と全く違う。この世界で私が最も不幸な存在で、最も英雄になるべき存在である。現在私に降りかかる不幸の全ては、私の英雄譚において、私を悲劇の英雄に仕上げるか、今後の栄光を際立たせるものなのか、そのどちらかである。私はこれを青年特有の高邁な自尊心であり、その思い込みが紛れもない生きるために働くエナジーだと考えている。

 そして、もう一つ私を含め多くの現代人とヴァンパイアとの共通点が、宗教への嫌悪である。ヴァンパイアは十字架をひどく嫌う。現代の日本人も社会的なシンボルのようなものをひどく嫌っているように思える。ヴァンパイアは信仰の象徴である十字架を嫌っていた。神の力が身を滅ぼすのである。そして、現代人も信仰というものを嫌っている。それは、信仰というものが何か得体の知れないものであり、信仰は身を滅ぼさないまでも、何も足しにはならないと考えているのである。

 ここで、ヴァンパイアにとっての神と現代人の神との違いについてまとめる。ヴァンパイアにとって神とは、まさしく絶対の存在で、生死を超越したヴァンパイアの存在を破綻させる無限の力を保持する。逆に現代人にとって神とは、まさに「死んだ。」のであり、存在もしない直接には無力な存在である。しかし、本格的な宗教に対する気味の悪さを抱いており、宗教にハマっているというと、怖がられてしまう。つまり、神はヴァンパイアに対しては直接の効力を発揮し、人間に対しては人間を媒介してしか効力を発揮できないのである。しかし、どちらも神や宗教に何か力のようなものを見出しているのだ。

SCHEDULE画像提供:https://flic.kr/p/5oyuNg​、Cody Long/flickr

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