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エイリアンと共同体についての講義を通して

                              

                                 ​参謀

 

 

 

 既存の作品から共同体と疎外をめぐる問題を抽出し、その解決策を考察した

 

 私はこれまで数多くのSF作品に触れているわけではない。私が今回、既存の作品から選定したのは『フランケンシュタイン』、『砂の女』、『のぼうの城』の3作品である。

『フランケンシュタイン』は大学1年生の時の「英米文学」の講義で扱った作品である。半期を通して、精読をした、私の中では唯一の本格的な王道SF文学作品だ。普段SFを読まない私にとって、SFを考察する上で必要不可欠な作品と言える。

『砂の女』は言わずと知れた安部公房の名作で、もちろん純文学で語られることが多いが、この作品は推理小説のような要素、そして他のSFと同様に社会性を強く含んだ作品である。そのため、今回はSF作品として、『砂の女』を考察しようと思った。

 そして、『のぼうの城』は、紛れもない時代小説で、SF的要素は皆無であるが、前近代における共同体の在り方を考察する上で、一つの参考になると考えた。

 まず、『フランケンシュタイン』についてだが、この物語において、エイリアン(異質な他者)として扱われるのは、クリーチャーである。クリーチャーが共同体から疎外されている原因はその外見だけではない。クリーチャーが阻害される原因には、親の存在というものがある。クリーチャーは主人公によって見放され、孤独と暮らしてゆく、いずれ孤独は途方もない怒りへと変わってしまう。

 私たちは生まれようとして生まれるのではない。常に親によって産み落とされる。その代わり、親は子に教育をし、自分が所属している共同体に、子を紹介し、子も共同体の成員として生きる。人間はこうして、半ば強制的に無意識に共同体に属する。しかし、クリーチャーはそうした過程を経ていない。共同体の必要性を知るには、共同体の外にいて、なお共同体にはもう属することのできない時点である条件がいるのではないか。

 この問題の解決策は、生み出した者が責任をもって、生み出された者の共同体の参加を促すことである。しかし、圧倒的に外見が異なるのであれば、共同体に属することは難しいかもしれない。

 『砂の女』は主人公が砂に埋もれてゆく家に閉じ込められ、そこに暮らす女性とコミュニネーションを取ってゆくのだが、この作品でも共同体の問題は潜んでいる。それは、共同体の「阻害する側」は常に監視し、気を配っている。ということだ。主人公は砂に埋もれてゆく穴に入れられ、そこから部落の人間たちは主人公たちの行動を監視する。私たちは異質な他者に対して、無関心でいることは出来ない。疎外したとしても、どんな存在なのか、知りたいという欲求が少なからずある。それが、この作品から読み取れる共同体の疎外の問題である。

 この問題の解決策は、情報を開示するという点である。常に公正で平等なやり取りを可能にするには、自分たちは何者なのか、何を目的としているのか、など情報を須らく伝達する必要がある。そうすることで、両者が信頼できる環境の土台が形作られてゆくのではないだろうか。

 『のぼうの城』は戦国末期、豊臣秀吉の大軍勢と小田原北条氏の小さな支城「忍城」という城が戦うのだが、これについても、共同体をめぐる議論ができる。

 それは、豊臣方は既に天下はほぼ手中に収め、関白秀吉に逆らう人間などいない。ほぼ天下統一はなったと考えていたが、忍城ではまだ荒々しい戦国の気風が残っており、二者の価値観は全くことあるものであった。そして、豊臣は上方、忍城は地方という、地理的、文化的な格差を含んでいた。そのため、忍城にとって豊臣はエイリアンに近い存在であったと言える。そして、物語では、忍城は包囲され、水攻めに遭うのだが、百姓によって水攻めの堤が破壊され、見事に豊臣軍は敗北する。つまり、豊臣は空間を意図し、忍城を包囲したが、時間を意図して作られた共同体は簡単に破壊されることはなく、挙句は共同体の維持のために大きな力を発動した。疎外されていたのは、大軍の豊臣軍であったのだ。そんな逆説的な事象から、時間をかけて作られた共同体の結束の力の強さが垣間見られる。それは、伝統や差別の問題で皮肉なことに、意図せぬ方向へ作用しているのだが…。

 そして、この共同体の解決策に関しては、前近代ゆえに公正な議論などが通用しない。そのため、頼るべきは「絶対的な存在」だ。日本のこの時代で言ったら、寺社や天皇といった絶対的な存在、両者が必ず屈する存在によって、紛争が解決されることである。

 以上、身勝手で稚拙な考察を行ってみた。

SCHEDULE画像提供:https://flic.kr/p/afyqgm​、shazaamtheman/flickr

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